軌跡

―三浦春馬さん―

2020-04-28「日本製」インタビュー

2020年4月28日 fanthologyの配信
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以下、配信記事より

三浦春馬がしびれた日本の“技、食、そして人”
4年かけ全都道府県を旅した日々

今年4月、30歳の節目を迎えた俳優の三浦春馬さん。映画・ドラマ・舞台と多忙を極めるなか4年もの歳月をかけ情熱を注いできたのが、全国各地の工芸・食・産業など日本伝統の“匠の技”を訪ね歩き取材する旅でした。「未来に残したい日本」をテーマに、47すべての都道府県をめぐった日々、その取材記が『日本製』というタイトルでこのほど刊行。4月5日の発売からわずか2週間で重版が決定するなど話題を呼んでいます。洗練された技術、頑なに守ってきた伝統……長い時間をかけた旅を通じて、三浦さんがしびれ、その心を大きく揺さぶった出逢いや伝統・技術を教えてくれました。

三浦春馬が旅に出る理由――「日本のことをまるで知らなかった」

――雑誌の企画としてスタートした『日本製』ですが、日本の伝統的な “匠の技”を訪ね歩くという内容に惹かれた理由を教えてください。

僕が24~25歳のときに持ち上がった企画でした。当時から俳優として日本各地に行く機会はあって、その土地ならではの特産物やグルメなどに触れることはしていたのですが、その由来やストーリーは知らず、漠然と学びたいという思いはあったんです。

一方で、海外で活躍する先輩方を見て「いつか自分も……」という思いから、短期の留学にも行っていました。そのとき、自分より年下の子たちが自国の素晴らしいところを語っている目の輝きを見て、素敵だなと感じると同時に、自分が日本のことをまるで知らないのが恥ずかしくもあったんです。いつか外国語が堪能になったとき、日本の魅力を海外の人にしっかり伝えられたらと思っていたので、それを学べる機会でもある、本当に魅力的な企画だと思いました。

――最初から全国47都道府県制覇を目指したのでしょうか?

なんとなくは思っていました。役者の仕事をしていて、日本各地は回れても、全ての都道府県に行く機会はなかなかないだろうなと感じていたので、そんな素晴らしい企画があれば是非!と。もし子どもができたとき「パパは47都道府県に行ったことがあるんだよ」って自慢できますしね(笑)。

4年かけた旅のなかで、心を揺さぶられた「人」「技」「食」

――取材をされたなかで、衝撃を受けた、または人生観が変わった出会いはありましたか?

広島県で「ヒロシマを語り継ぐ教師の会」の梶矢文昭さんにお話を聞かせていただいたときのことはすごく鮮明に覚えています。以前『永遠の0』という映画に出演したとき(2013年)、第2次世界大戦を経験された方にお話を聞いたことがあったのですが、被爆した方に直接お話を聞くのは初めてでした。やはり書籍として読むのとは違って、感じることが多かったですね。

また、東京オリンピックは延期になってしまいましたが、梶矢さんは聖火ランナーを務められる予定だったそうで「当時は原爆の火から逃げるために走っていたけれど、今回は聖火を持って走ることができる。これまでは過去を語ることで未来に繋げてきたけれど、火を未来に繋げられることがうれしい」という話も聞けて、すごくいろいろなことを考えさせられました。

――日本の伝統的な匠の技もたくさん取材されていましたが、三浦さんの知的好奇心をくすぐるような“技”で印象に残っているものは?

宮崎で取材させていただいた神楽面(かぐらめん/さまざまな儀式の際に舞われる“神楽”で使用されるお面)彫師の工藤省悟さんは、僕と世代が近いのですが、すごく印象に残っていますね。神楽面の創作過程を見学させていただいたとき、最初は「鬼の形相」のお面は、彫るのがとても難しいと思っていたんです。でも、実際お話を聞くと、天鈿女命(あめのうずめのみこと)というのっぺりとした女性のお面のほうが難しいとおっしゃっていて、驚きました。

目の下の涙袋など、顔のちょっとした凹凸を表現する際に、すこしでも傷がついたら取り返しがつかなくなるのだそうです。ものすごく熱量を持って作業をして、繊細な表情を作っている。それだけのことをして表情を創るから、作品に触れた人の心が動くんだなと……。

僕ら役者も強い覚悟を持って、演じる仕事に取り組まなければいけないと改めて思いましたし、プロフェッショナルで一途でいることがいかに尊いかを感じられる取材でした。

――食文化も日本ならではの素敵なものばかりでしたね。三浦さんの琴線に触れたものは?

いっぱいあるので、一つに絞るのは難しいなー(笑)。なんだろう……どこの県の特産物にもストロングポイントがあるので……。香川のうどんも良かったし、蛇口から天然の炭酸水が出てくる大分の白水鉱泉なんかも驚きましたね(笑)。

――難しい質問ですみません。

そうですね……山口県でいただいたフグは、当たり前のように出していただいたのですが、(フグは毒を持っており)人の命がかかっているので、絶対間違いを犯してはいけないという使命感で培われてきた技術があります。

それに加えて、僕が訪れたお店「栄ふく」さんには家族経営の温かさもあって。職人さんが親子三代で仕事場に立ち、店内も住んでいた家を改装したものなんです。ただ料理を提供するのではなく、来てくれるお客さんに楽しんでいただきたいというこだわりが、とても素敵でした。どの料理も素晴らしく、気の利いた言葉を紡ぎ出したいのですが「おいしい」しか出てこなかったですよ(笑)。

――『日本製』では、日本各地の知られざるすごい技術や人を紹介していますが、取材を通じて三浦さんの地元である茨城県土浦市への思いも変化したのではないでしょうか?

『日本製』で取材しながら、「自分の地元の誇れるところはどこだろう?」ということは常に意識していました。幼い頃からずっと身近だった土浦の花火大会はもちろんですが、ほかにも、陶芸家の板谷波山(いたや・はざん)さんという、ヨーロッパのアール・ヌーヴォーを日本の文化に落とし込もうと取り組んだ第一人者も茨城出身だということを知りました。

さらに『日本製』で取材させていただいた岐阜県の美濃竹紙工房の和紙の原材料に、茨城県大子町の楮(こうぞ)が使われていることを知ったときも、誇らしい気持ちになりましたね。

日本の伝統文化、その真髄は「発酵」?

――本当に充実した取材記ですが、俳優業でお忙しいなかで全国を取材した4年間は、どんな時間だったのでしょうか?

自分のモチベーションや行動力を保つには“燃料”が必要で、その燃料をどのように作っていくかというと、人の話を聞くことがとても大きいと思うんです。製品やサービスのストーリー・性質を掘り下げて聞くことが、自分のモチベーションに関わっていくのだなと痛感させられる時間でした。

また、人の話を聞くって面白いことだなと改めて感じました。ある製品を手に取って持ち帰りたいなとか、着たいな、使いたいなと思う判断基準の一つは、そのものが出来上がるまでのストーリーがとても大切なんだなと、しみじみと思いましたね。ものに対する価値観も変化した4年間でした。

――なるほど。旅を終えた三浦さんにとって、一言で言うと、日本の伝統工芸や技術とは?

「発酵」という言葉が思い浮かびました。日本は島国なので、多くのことは大陸から学んだのかもしれませんが、限られた土地のなかで、一生懸命に試行錯誤して、自分たちの文化にしてきたんですよね。その工程は「発酵」という言葉に置き換えられるのかなと思いました。

――三浦さんが伝統文化に触れ、そこからインスパイアされたものを、これから先の未来に伝えていくという視点は、すごく意義のある企画ですね。

文化もそうですが、“取材させていただいた人が培ってきたことからどうやって未来を見るか”ということが、『日本製』で学んだ大きなことです。とても貴重な時間でした。

「さらに上質なものを届ける」ときのために、今は心と身体を健やかに保つ

――“未来”という意味では、いま新型コロナウイルス感染拡大のため、日本という国も大きなピンチに立たされています。エンターテインメント業界も大きな打撃を受けていますが、三浦さんはどんなお気持ちで日々を過ごしていますか?

業界全体について僕が話をするのはおこがましいので、あくまで個人的に思っていることですが、自分にできることは、心も体も健やかに保つことだと思っています。僕が関わった舞台も、全公演を行うことはできませんでしたが、こうしたなかでどうやって皆とモチベーションを保てばいいのかや、周囲の人々に思いやりを持って接することなど、多くを学ぶことができました。

厳しい状況のなかでも、決して失ったものばかりではなかった。だからこそ、皆さんが生のエンターテインメントを楽しめる余裕が持てたとき、もっと上質で、誰もが「見に来てよかった」と思ってもらえるようなものを提供できるようなプレイヤーでいるために、できることをコツコツ積み重ねていきたいと思っています。

 

撮影:田中達晃/Pash 取材・文:磯部和正 記事制作:オリコンNewS

出典:fanthology

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