軌跡

―三浦春馬さん―

2018-11-14「罪と罰」三浦春馬&フィリップ・ブリーン インタビュー

2018年11月14日 ステージナタリーの配信※ブログ投稿日は、実際の配信日で設定

 

以下、配信記事より(第2弾「罪と罰」箇所のみ抜粋)

三浦春馬・フィリップ・ブリーンが語る「罪と罰

2019年1月から2月にかけて上演される「罪と罰」で、2度目のタッグを組む三浦春馬とフィリップ・ブリーン。ドストエフスキーの長編小説を原作に、ブリーン自身が上演台本と演出を手がける本作は、自身を“特別な人間”と信じて殺人を犯す、頭脳明晰な貧乏青年ラスコリニコフを軸とした物語だ。10月下旬、稽古開始を控える2人がメールにて、作品への思いと互いの心境を明かした。

三浦春馬
ブリーンさん、稽古の初日まであと1カ月となり、得体の知れない不安と焦燥感がまとわりつき始めました。

フィリップ・ブリーン
春馬さん、私もです。しかも私は日本で7週間も暮さなければならないのです!

緊張や不安は自然なことですが、それも何かに役立つものではありません。
お客様は、プロフェッショナルな俳優が非常に難しいことをしている、その姿を観に来るのです。だからお金を払ってチケットを買うのです。
例えば腕を痛めてお医者さんに行ったとき、お医者さんに「ああどうすればいいかわからない!
医学部でもっと勉強しておけばよかった!」なんてパニックを起こしてほしくないですよね。
お医者さんには、これまで訓練してきた通り、落ち着いて仕事してもらい、ただシンプルに「腕が折れていますね。専門の病院に行きなさい」と言ってもらいたいですよね。
春馬さんがしなければならないことも、それと同じ。白衣を羽織り、シンプルに、でも効果的に、鍛錬してきたことを行うだけです。 ただ、作品の中では、たくさんの人たちに頼ることができる、と覚えていてください。私達はみんなで一緒に、舞台に臨むのです。あなたは決して1人ではありません。誰も1人ではありません。
焦りについては、どうすることもできません。ただ“今、ここ”にいることです。すべての可能性がオープンな、この“今”という時間を楽しんでください。そうすればすべての可能性がいつでも開かれていることが分かるでしょう。

三浦春馬
最近、とある俳優さんからこんなアドバイスを頂きました。「『罪と罰』の中で感じ取れる宗教観念を勉強するのもいいが、観客はあくまでも日本人なので、知識にとらわれ過ぎず、自分のセリフを大切にしてあげること、集中力を高めること、瞬発力を発揮すること、そして力を込めたり抜いたり、柔軟に対応してご覧なさい」と。

フィリップ・ブリーン
とても良いアドバイスをもらいましたね。
私たちは“アイデア(考え、観念)そのものを演じる”ことはできませんが、“アクション(行為、行動)を起こす”ことはできます。問いかけることもできます。
例えばどうしてラスコリニコフは、自分が犯した罪をはっきりと話せないのか?
どうして彼はマルメラードフと友人になり助けることを選択したのか?
どうして彼は罰を受けることを望んだのか?
そしてどのように彼は変わっていくのか?

そして、ラスコリニコフが、なぜこのようなことをするのか、したのかを自分自身に問いかけ、その答えに正直に向き合ってみてください。
自分は、誰かを殺すような状況になり得るだろうか?
自分を止められずに残虐な行為をしてしまう、そんな状況になり得るだろうか?
あるいは赦しが必要だったときはあるだろうか?
この役を演じるということは、自分の中にいる殺人鬼と向き合うことになるのです。

大切なのは、あなたがラスコリニコフという登場人物を、理路整然とまとめようとしないことです。
あなたが演じるのは人間で、人間はけっして理路整然とはしていません。
人間は常にすばらしいものであり、同時にめちゃくちゃにひどいものです。
私が芸術に携わる唯一の理由は、そんな誰しもに共通する人間らしさを思い出させるためであり、私たちは1人じゃないと思い出させるためであり、舞台上で描くのとまったく同じような人生の一面を、誰かが(実人生で)経験してきたことを思い出させるためなのです。
ラスコリニコフが自分の中に抱える矛盾を考えてみてください。
ラスコリニコフは残忍です。そして優しくもあり、執念深くもあり、慈悲深くもあります。
あなたがありのままの姿でいれば、観客はあなたをきっと愛するでしょう。
なぜならあなたは、観客の彼ら自身を演じているわけですから。

三浦春馬
稽古に入る前に何か準備したほうがいいことがあればおっしゃってください。

フィリップ・ブリーン
とにかくまずは台本を読むこと。もし原作小説のいい日本語訳版があるなら、それも読むこと。そして運動し、正しい食事を摂り、心と身体を良いコンディションに整えてリラックスしてください。新鮮な空気をたっぷり吸ったり、友達と会うことも大切です。だってもうじき、薄暗い稽古場で1日のほとんどの時間を過ごすことなるのですから(笑)。

稽古ではもちろん私も、この作品の歴史的、政治的、知的な世界について説明をしますし、それはきっと春馬さんの助けになると思います。
それに私は、古典の大作戯曲とは、(例えば、ですが)ネイティブアメリカンドリームキャッチャーのようなものだと思うことがあるんです。ドリームキャッチャーはヨーロッパでもよく売られていて、ほかにはない面白いものだと思いますが、その本当の意味や面白さを理解するためには、ネイティブアメリカンが眠りをどのように考えていたか、それが彼らのテント型の住居であるティーピーのどこに掛けられていたか、などをきちんと理解しなくてはなりません。 あるものの真の美しさや意味を理解するには、その周辺にある文化的な事柄も明らかにしなければならないと思います。

三浦春馬
不安や焦燥感はありますが、同時に僕のモチベーションは今、とても高い状態にあります。稽古場で毎日生まれるアイデアと、役どころ、作品への思いを一緒に馳せる悦びに期待で胸があふれています。

フィリップ・ブリーン
僕も同じです。俳優の皆さんは、僕が自分の部屋で1人で学ぶよりも、はるかに多くのことを教えてくれるんですよ!
私は、芝居はネックレス作りのようだと思うんです。
ビーズがネックレスになるのは、一番最後の瞬間です。俳優がすべきは、鮮やかに色付けされた(不調な色彩の)ビーズを1つずつ糸に通すこと。そして最後にそれがネックレスになることを信じること。明確に具体的に、そして鮮明に観察すればするほど、そのビーズはより特別で輝くものになると思います。

出典:ステージナタリー

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