軌跡

―三浦春馬さん―

2018-10-06「tourist ツーリスト」インタビュー

2018年10月6日 PlusParaviの配信
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以下、配信記事より

三浦春馬「旅が、自分の中にある強さに気づかせてくれた」【『tourist ツーリスト』インタビュー】

動画配信サービス「Paravi(パラビ)」初のオリジナルドラマ『tourist ツーリスト』――同作は、悩みを抱える3人の女性が、旅先で出会ったミステリアスな男性・天久真(三浦春馬)との交流を通じて、本当の自分を見つけ出すオムニバスドラマだ。水川あさみ主演の第1話「バンコク篇」はTBS、池田エライザ主演の第2話「台北篇」はテレビ東京、そして尾野真千子主演の第3話「ホーチミン篇」はWOWOWで放送されるという、史上初の3局横断放送を行い、パラビでは未公開シーンを含む「フルバージョン」と、三浦演じるミステリアスな男性・天久真の目線でストーリーが展開する「天久真バージョン」を独占配信する。

そこで今回は三浦春馬さんにインタビュー。唯一全話に出演する三浦さんだから見えた『tourist ツーリスト』の世界を一緒に覗いてみたい。

僕の中にも、真と重なるところがある

三浦さんは、とてもこまやかな感受性の持ち主だと思う。短い取材時間の中で、少しでも作品に乗せたものを伝えようと、いろんな言葉で、表現で、自分の想いを語る。それも、「この言葉を使うと、ちょっと強すぎるんだけど」といった具合に、出来る限りいちばんフィットした単語を探ろうとする。真摯で、誠実な人なのだろう。役の仮面を外した途端、演じた天久真のミステリアスな雰囲気はどこにも見つけられない。その別人ぶりに驚かされる。

「天久真がどういう男なのか、最初から全部は明らかにされてはいなくて。回を重ねるにつれて、いったい彼が何者なのか、何のために旅を続けているのか、徐々に明らかになっていく。彼の秘密も、この作品の楽しみのひとつですね」

天久真は、「バンコク篇」「台北篇」「ホーチミン篇」の全話に登場する唯一のキャラクター。だが、あくまで各話のヒロイン視点から描かれており、その正体は大部分が謎に包まれている。そんな真の人物像を掴むべく、三浦さんは台本上には描かれていない詳細まで緻密に練り上げて役づくりを行った。

「プロデューサーと一緒に、彼の経歴から、今どういう状態なのか、この旅の最終目的は何なのかまで、かなり細かく話をして、真という人間をつくり上げていきました」

だからこそ、その正体が明らかになった最終話を終えた後、もう一度、1話から見直したら、気づかずに見落としていた何気ない表情にまったく別の意味合いが浮かんでくるんじゃないか。そんな期待が膨らむ。

「それは嬉しい期待ですね(笑)。自分としても、そんなことも少し計算に入れながらつくっているつもりなので、仕上がりがどうなっているのか観るのが楽しみなんです」

そうユーモアと知性が完璧なバランスで調和した笑みを浮かべる。
天久真は、ある絵葉書を頼りに各国を旅する男。謎めいた横顔に隠しているのは、長年彼自身を苦しめ続けてきた「呪縛」だ。「あること」に縛られ続けている天久真という男を、同世代のひとりとして、三浦さんはどう見つめているのだろうか。

「僕自身、子役としてこの世界に入って、挨拶をきちんとするとか、現場で迷惑をかけてはいけないとか、いろいろと教わってきました。子役としての見えない義務みたいな感じで、物心ついた頃から忠実にそれを守ってきたところがあって。その影響か、大人になった今でも現場で人の顔色を窺ったり、周囲を気にしすぎたりする部分があるんですね。そこは真と少し重なるところかもしれません」

彼女たちは、みんな最初から強さを持っていたと思う

そんな真と旅先で出会うのが、各話のヒロインたち。真と異国の地を過ごすことで、彼女たちは人生の次の一歩を踏み出していく。

「彼女たちはみんな旅のゴールがある。でもそこに辿り着くまでの間に迷ったり何かに縋ったりしたくなる瞬間があって。その時にたまたま現れたのが真だった。それがとても劇的で魅惑的だからドラマになるし、真のおかげで女性たちが強さを手に入れているように見えるんだけど、僕からすると、彼女たちが手にした強さはちゃんと最初から自分の中にあった気がするんですね。ただ、上手く言い表せなかっただけというか、自分の中にある強さを見つける方法を知らなかっただけで。それを知るきっかけが、旅に出ることだったのかなという気がします」

そんな繊細でありながらたくましいヒロインを3人の女優が演じた。三者三様の魅力を三浦さんはこう表現する。まずは「バンコク篇」でヒロインを演じた水川あさみさんについて。

「水川さんはいつ何時(なんどき)も自然体。芝居においても変につくりこまず、そのときの自分の感受性や相手の芝居に向き合って、自由に演じてくれる。3度目の共演ですが、安心できる仕事のパートナーだと思っていますし、今回も水川さんが相手だからこそ異国の地でも気兼ねなく芝居に臨めました」

台北篇」のヒロイン・池田エライザさんについては「この年齢でこんなに周りを見渡せる女優さんはなかなかいない」と舌を巻く。

台北は撮影スケジュールが一番タイトで。中でもエライザちゃんは主演ということもあって一番大変だったと思うんですけど、その中で天真爛漫に振る舞う瞬間もあれば、すごく面倒見が良いなと思う瞬間もあって。細かいところまでよく目を配れる方だなって、僕を含めみんなが感心させられました。お芝居も密度が高いというか、内容のつまったお芝居をする方で。これまで見てきた彼女の印象とはまた全然違って、すごく新鮮でした」

そして「ホーチミン篇」の尾野真千子さんについては「いい意味で、本当にまだわかっていないです」と自分でも少し驚いているような表情を浮かべた。

「この『ホーチミン篇』は天久真の中にある母親像が浮き彫りになる回。母親を労る気持ちと、母親の周りに男性の影が見え隠れすることで生まれる少しの嫉妬心と。そういういろんなよくわからない感情と向き合いながら、それこそ僕自身の母親像も投影させつつ、真を演じていました。そんな僕に対し、尾野さんは母性のようなものを身にまとい対峙してくれた気がして。おかげで僕自身、すごく神秘的な気持ちになれた。そういう意味でもめちゃくちゃ印象深いですね、尾野さんとのお芝居は」

都市ごとに異なる表情の違いも楽しんでほしい

バンコク台北ホーチミンの3都市に渡ってロケを敢行。各話ごとに監督もチェンジする。印象の違いについて尋ねると、三浦さん独特の感性が光る言葉が返ってきた。

「これは僕だけの意見かもしれないですけど、『バンコク篇』の印象は少し"青臭い"というか。暑い昼間に嗅ぐ牧場の藁の匂いを色味にしたらこんな色なんじゃないか、という印象をトレーラーから受けました。恐らく昼と夜のコントラストを最も強く感じられるのが「バンコク篇」。時間の流れと共に街の表情がガラッと変わって、それとリンクするように僕らの表情もめまぐるしく変わっていく。そんな感情の激しい移り変わりが見応えになる回だと思います」

台北篇」については迷わず"赤"と即答する。

「それも妖艶で生暖かい"赤"ですね。照明チームのみなさんがつくってくださった"赤"の世界に、僕とエライザちゃんの表情があって。自分で言うのも恥ずかしい思いがあるんですけど、普段日本で撮影している僕とはまったく違う表情に見えました。きっとそれは土地ごとに移り変わる僕の精神状態が映像に表れているから。各話によって異なる表情の違いも大きな見どころのひとつですね」

ホーチミン篇」については、色味というよりも質感の違いが心に残ったそう。

「たとえば『バンコク篇』と『ホーチミン篇』を比べると、『バンコク篇』は強い光の中にも柔らかさがあって、夜の映像も包みこんでくれるような優しさがある。『ホーチミン篇』は現場で映像を見た感じとトレーラーの印象で言うと、すごくリアリスティックというか、現実を突きつけるような色味が点在していて。"痛い"っていう表現が一番しっくり来るのかな。ざらっとしているような、ふれると摩擦で手の皮が剥けそうな、そういうリアルな質感なんです」

若い頃は、旅が不安で億劫だった

ある目的を胸に秘め、旅を続ける真。では、三浦さん自身が旅に求めるものは何だろうか。

「刺激ですね」

質問に対し、そう一言切り出して、それから三浦さんは自分の思考を整理するように話しはじめた。

「実は10代から20代前半の頃は旅に出るのが不安で億劫だったんです。言葉も喋れないし、知らない土地でどう楽しんでいいのかわからず、足踏みしている自分がいて。でも、だんだん年齢を重ねるにつれて、新しい世界や感覚、カルチャーを見つけられることに楽しさを見出せるようになった。そこからもっとオープンになっていいんだと思えるようになりました」

アウェーの環境に怯み、閉じこもりがちだったかつての自分。三浦さんがオープンになることの大切さを知ったのは、以前、ある国に滞在した時にお世話になったホストファミリーとの出来事がきっかけだった。

「当時、僕はミュージカルのお仕事に力を入れたいと思っていて。ひょんなことからホストファミリーの前で自分の歌を披露することになったんです。もちろん歌詞は全部英語。発音も歌のスキルもまだまだ満足なレベルじゃなかった。でも、僕の歌を聴いたホストファミリーのみなさんが『もう一度聴きたい!』と大喜びしてくれて。『あなたがこれからやろうとしていることは素晴らしいことなんだね』と笑顔で言ってくれたんです」

それまで英語を上手く話せないことから気まずい想いや悔しい想いもすることもあったと言う三浦さん。だがその一件が、三浦さんの考え方を一変させた。

「大事なのは、スキルではなく、ちゃんとやりたいことを主張したり、自分の言いたいことを伝えることなんだなって。そこから僕自身もオープンになれたし、違う国や文化の人たちとのコミュニケーションをより楽しめるようになりました。それは日本に帰ってからも同じで。それまでよりずっと開放的になれた気がします。同じ環境でずっと悶々としていても何も変わらない。環境を変えて、刺激を得ることで、新しい自分の可能性に気づいたり、自分がいかに恵まれた場所にいるのかわかることもある。そういう意味でも、旅は人生においてすごく価値のあること。そんなふうに自分と重ね合わせながら、各回の主人公たちと一緒に自分の人生について考えてもらえたら嬉しいです」

そう言って浮かべた笑顔から、爽やかさだけでなく、深みと陰影を感じられるようになったのは、決して気のせいではないはずだ。経験という名の絵の具を混ぜ合わせ、「三浦春馬」という俳優の色は、どんどん濃く、独創的になっている。その唯一無二の色彩が、『tourist ツーリスト』にどんなグラデーションをもたらすのか。楽しみに待ちたい。

出典:PlusParavi

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