軌跡

―三浦春馬さん―

2018-08-06「銀魂2」インタビュー

2018年8月6日 Woman typeの配信※ブログ投稿日は、実際の配信日で設定

 

以下、配信記事より

「仕事では1ミリの妥協も許さない」プロとして貫く鉄の掟

プロには、これだけは守りたいという「掟」がある。そして、それがその人の「道」となる。2018年8月17日公開の映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』で三浦春馬さんが演じた伊東鴨太郎は、そんな「武士道」とは何かを問うキャラクターだ。眼鏡の奥に隠したインテリジェンスな眼差しに、伊東の持つ複雑な人間性を表現した三浦さん。その役づくりを聞いてみると、子どもの頃から一心に歩み続けた三浦さんの「役者道」が見えてきた。

いつだって迷いがない。やりたいことが明白。
そんな監督がいたから、“自分の仕事”にまっすぐ取り組めた

2017年実写邦画ナンバーワンの大ヒットとなった『銀魂』から一年。待望の続編となる本作で、新たに『銀魂』ファミリーに加わることとなった三浦さん。演じる伊東鴨太郎は武装警察・真選組の参謀。局長・近藤勲中村勘九郎)の信頼を勝ち得て、入隊からわずか一年で隊の中心人物にまで上りつめた文武両道の策士だ。副局長の土方十四郎柳楽優弥)とは犬猿の仲。理知的な瞳に隠した伊東鴨太郎の策略が、真選組に重大な危機をもたらす、まさに今回のキーパーソンとなる役どころだ。役づくりを兼ねて、原作・アニメもチェックしたという三浦さん。その中で、ある選択肢が心に浮かんだという。

「今回、鴨太郎を演じる上で最初に考えたのは、内面の表現。アニメの鴨太郎は最後まで全く表情を変えないんですね。じゃあ、それを実写で演じるとなった時に、アニメのように冷酷さ一辺倒でいくのか、それとも微妙な表情の変化から鴨太郎の心の動きを想像できるような演技がいいのか。そこをまず衣裳合わせの段階で福田(雄一)監督と相談しました」

三浦さんの心の中には、自分が見せたい伊東鴨太郎という像が既にはっきりと確立していた。

「僕自身は、生身の人間が演じるからこそ見せられる鴨太郎に挑戦したいと思っていました。例えば、劇中で戸塚(純貴)くん演じる山崎退が鴨太郎の正体に気付いて、土方のもとへ走っていくシーン。それを見ている鴨太郎は一体何を考えているんだろう、とか。自分にはない仲間の絆が眩しく煌びやかに見えているのか。それとも憎らしく見えているのか。一瞬の瞬きや眉間に皺を寄せるといった表情の変化で、観ている人があのときの鴨太郎はこう考えていたんじゃないかと想像できるような、そういう映画ならではの人間味を見せたいというふうに監督には伝えました」

そこから福田監督との二人三脚の芝居づくりが始まった。映画は、監督というリーダーがいて、スタッフ、俳優がいて、チームでコミュニケーションを取りながらつくりあげていくもの。ヒットメーカーの福田監督と初めてタッグを組んだ三浦さんは、監督の「ある点」に驚いたそう。

「監督のすごいところは、全く迷わないところ。やっぱり、チームのリーダーが迷ってしまうと、不安に思う人が出てきてしまいます。でも監督は僕らが相談したり提案したことについて、いつでもスパッと答えをくれる。監督のやりたい方向性はこっちなんだっていうものがすぐに伝わるから、僕たちも監督の目指す方向に向けて気持ち良く振り切れるし、芝居に集中することができました」

決断力は、リーダーの条件。それはビジネスの世界でも同じこと。頼れるリーダーがいることで、チームのコミュニケーションも活性化する。

「現場でも、僕が『こういう表情を見せたいです』って話をしたら、すぐにテストをさせてもらえましたし、それを見た上で『ちょっと逡巡の色を出し過ぎているから、もう少し抑えめで』と細かくオーダーをくださるので、すごくやりやすかったです。どのシーンもしっかり監督と意思疎通を図りながら撮っていけた実感がある。監督とちゃんと意見をマッチングさせながら、映画ならではの鴨太郎がつくれたんじゃないかなと思います」

やりたいことは絶対にカタチにする。
役者・三浦春馬をプロたらしめる鉄の「掟」

本作の騒動の火種となる真選組には、さまざまな局中法度がある。決して破ってはいけない武士としての「掟」。子どもの頃から芝居の世界で生き、28歳にしてプロフェッショナルの風格を漂わせる三浦さんには、役者として、どんな「掟」があるのだろうか。そう尋ねると、しばらく俯いて考えた後、ぱっとそこに光が射し込んだように、迷いのない口調でこう答えた。

「やりたいことは絶対にカタチにする、ですね」

そう答えた後、その意味を自ら確認するように話を進めた。

「『掟』というとやや固いかもしれませんが、妥協は絶対したくない。表現する仕事をさせてもらっている者としては、クリエーションに関して力を抜くことは嫌なんです。これがやってみたいと思いついたことに関しては実現できるように最善を尽くす。それが、僕なりの『掟』ですかね。やる前から無理だって諦めてしまうことはしたくありません」

誰も気付かないことかもしれない。
それでも最後まで、こだわり抜きたい。

そんなストイックな「掟」が生んだこだわりが、本作にも込められている。

「ちょっと設定は特殊ですが、この作品も時代劇の一つ。武士の世界で生きるには、やっぱり殺陣であったり、所作の一つ一つが大事になるなと思っていて。僕もまだまだ知識は全然足りていませんが、武士にとって刀は命。だからこそ、手入れには絶対にこだわりがある。そんな武士の当たり前をきちんと表現したいなという気持ちがありました」

特に三浦さんが重視したのは、人を斬ったあとの所作だ。

「自分の命である刀を錆びさせるわけにはいかない。だから刀についた血を拭う所作は大事にしたいな、と」

どうすれば真選組らしい血を拭う所作ができるか。
悩む三浦さんの頭の中に、ふとあるアイデアが浮かんだ。

「ずっと真選組がつけているスカーフについて、何でこれを皆で巻いているんだろうって引っかかっていたんですね。その疑問と、刀を拭う所作がふっとつながって。だったら、このスカーフで血を拭ったら、真選組らしさが表現できるんじゃないかと思いついたんです」

だが、その妙案が浮かんだのは、撮影前日の夜。明日には鴨太郎が人を斬る場面の撮影がある。このアイデアを実現するには、監督はもちろん、スタッフにも話を通し、協力を仰がなければならなかった。人によっては、時間がない、と諦めてしまっても仕方ない局面。だが、三浦さんの「役者道」に妥協の文字はない。すぐさま監督に掛け合い、スタッフに相談を持ち掛けた。

「『銀魂』は老若男女誰もが楽しめるお祭り映画。小さいお子さまもご覧になるからこそ、血の表現は配慮が必要です。そうした解決しなければいけないことがいろいろあったんですけど、皆さんと話し合う中で、『こういうカタチならできるよ』という結論が見えて。その結果、出来上がったのが鴨太郎のあるシーン。人を斬った後、スカーフで血を拭い、土方に向かって振り向く前に、血のついたスカーフを投げるという所作をやらせてもらいました。これは原作にはない、映画だけのオリジナル。自分のアイデアを形にできたことが嬉しいし、実現するために力を貸してくださった監督やスタッフの皆さんに感謝しています」

それは、この解説がなければ見落としていたかもしれない、さり気ない所作だ。だけど、そんなディテールにまで妥協を許さないのが、三浦春馬のプロフェッショナルとしての掟。

誰も気づかないような小さな部分にも妥協を惜しまず、魂を注ぐ。
やりたいことは絶対に形にする。
こだわりを貫きながら、三浦さんは長い長い「役者道」をこれからも突き進んでいく。

 

取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴

出典:Woman type

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