2015年7月27日 映画ナタリーの配信※ブログ投稿日は、実際の配信日で設定
以下、配信記事より
「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」三浦春馬インタビュー
見えざるものとの戦いに捧げた日々
マンガやアニメが先にあると参考にしやすい
──「進撃の巨人」は大きな壁に囲まれた世界を描いていますが、三浦さんは最近何か大きな壁を感じたことはありますか?
この間教習所に行ったんです。
──はい(笑)。
免許の更新で講習を受けなければいけなかったんですが、そのときの先生がおじいちゃんで、しゃべりながら今にも寝そうだったんです。心地いい感じに講習を受けている僕らもみんなやられてしまいそうになっていたら、もう1人の教官が「起きてくださいよー」って。そのときの睡魔が最近感じた一番大きな壁でした(笑)。
──その壁を乗り越えたときはどうでしたか?
更新できました(笑)。
──三浦さんは「君に届け」「ごくせん」などこれまでにもマンガ原作の実写作品に出演されてきましたが、マンガが好きだからそういう作品を選んでいるということでしょうか?
いえ、そういうつもりはありませんでした。
──マンガ原作かそうじゃないかは作品選びにも演技にも関係ないと。
一概にそうとは言い切れないと思います。マンガやアニメが先にあると、参考にしやすいというのは確実にありますから。だから事前に必ず原作は読みます。
──実写化に期待しているマンガがあったりしますか?
それは考えたことがありませんでした。ただ、「ONE PIECE」が歌舞伎化されるみたいなんですが……知ってました?
──はい(笑)。
スーパー歌舞伎(「スーパー歌舞伎II ワンピース」)でやるのは観客として楽しみです。楽しみじゃないですか? 「ONE PIECE」がどうスーパー歌舞伎になるのか。
──興味深いですね。
間違いなくすごいと思います。絶対観に行きます。
自分がまさかエレンをやるとはまったく思っていなかった
──映画に出演が決まる前から原作マンガ「進撃の巨人」のファンだったそうですね。
はい。読んでいました。
──どんなところに魅力を感じていたんですか?
絶滅の危機に立たされた人類と巨人との戦いという構図がすごくわかりやすくてキャッチーだなと思いつつ、その背景にはいろんな緻密な計算、ストーリー設定があるというのがまず1つ。それと、普通の人間と姿形が似ているものに蹂躙されることが、異質というか、とても新しいなと思いました。まったく表情がない巨人たちに食べられていくっていう、その敵対する関係性も独特だなと思っていました。でも、窮地に追い込まれている人間の会話の中に、かなりユーモアが含まれているというところも面白い。そこでそのギャグを言うかって。笑いのスパイスがちりばめられているのもかなり大きな魅力だなって思います。
──今回の出演オファーが届いたときの心境は?
「進撃の巨人」の実写化プロジェクトが動き出しているっていうのは、お話をいただく前から聞いていたんです。だから自分がまさかエレンをやらせていただけるとはまったく思っていなかったんです。もう撮り終わったかなって思っていたら、マネージャーから台本を渡されたので、唖然としたというか、信じられなかったです。「あ、まだ撮ってなかったんだ」って。年齢的にも原作のキャラクター設定と異なっていたのでびっくりしました。
──最初からエレン役でのオファーだったんですか?
最前線でやってほしいと言われたのはそうですけど、主人公がエレンかどうかもまだ決まってなかったみたいなんです。エレンにするのか、違うキャラクターにするのか、台本も決定稿ではなかったのでわかりませんでした。ただ、「進撃の巨人」の世界に生きられるんだっていう喜びはありました。映画の中で自分も立体機動装置を使って空を飛び回れるというのもすごく楽しみでした。
この作品には新しいキャラクターの存在は必要不可欠なもの
──エレン以外に原作で感情移入できるキャラクターはいましたか?
自分が演じるというのとは違いますけど、ミカサかなあ。ミカサの人を思う気持ち、エレンを思う気持ち、「この世界は残酷だ」っていうすごく印象深いセリフ。ミカサは人間離れしている部分が多いけど、一番人間らしい感情を持ちあわせていると思うんですよ。エレンが助かったときに大声で泣いたりして。普段冷静なんだけど、心の奥底ではいろんな感情が渦巻いてる感じがすごく好きなんです。
──エレンについては?
原作と本質的な部分は変わらないと思いますが、自分の現状に満足していない。何に向かって突き進んでいけばいいかわからないっていうところが、映画のシナリオではより強く描かれているように思います。何かを達成しようとする強い気持ちが根底にあって、それがまっすぐだから青臭く見えてしまう。内側に大きなパワーを持っている青年だというのは、原作でも映画の脚本でも共通する部分かなと思っています。
──人気マンガが原作ということで、エレン役を演じることにプレッシャーは感じましたか?
プレッシャーはありました。原作ファンの方はどういうふうに感じるんだろうかと、最初は思っていました。
──映画には原作にない新しいキャラクターも登場しますから、原作ファンの反応は気になりますよね。
原作にないキャラクターが大勢登場するのは新しい試みだなって思いました。ただ、この作品には新しいキャラクターの存在は必要不可欠なものだと思います。脚本の中にきちんと存在していたので、そこに違和感は特別なかったですね。
──エレンについても最終的にはそれほど原作を意識することはなかったんでしょうか。
そうですね。自分がエレンに見えるかどうかということよりも、映画の世界観がちゃんと「進撃の巨人」としてファンに受け入れられたらそれはすごく幸せなことだなって思っていて。それに尽きるかなと思います。
監督の挙げた3本の映画は何に活用すればいいのかわからなかった(笑)
──原作や脚本を読みこむということ以外に何か特別な準備はしましたか?
樋口(真嗣)監督から、「これ観て参考にしておいて」と言われて3本映画を観ました。「シャイニング」と「時計じかけのオレンジ」と「クロニクル」だったんですが、何に活用すればいいのかわからずに悶々とした記憶があります(笑)。恐怖に慄く表情とか、眼力とかそういうことだったと解釈しているんですが……。
──監督に聞いてみたいですね。
あと、ダンテの「神曲」もいただきました。それは世界観というか、混沌とした画の感じが「進撃の巨人」と近いような気がしてイメージが湧いたんですが映画のほうは……どこかのタイミングで樋口監督にあの3本を貸してくださった理由を思い切って聞いてみようかなと思っています(笑)。
──観たことは伝えたんですか?
一切触れてないです。DVDを監督にお返ししたんですが、2人の間にその話題はありませんでした(笑)。
ワイヤーアクションは1人では全然できない
──ほかにアクションのための準備も必要だったんじゃないですか?
ワイヤーアクションをかなり多用するということでしたし、経験もなかったので、どんなオーダーや変則的な動きにも対応できるように、外側の筋肉ということではなく内側の体幹をトレーニングしようと思い、内側の体作りを続けました。やらないよりはやったほうが不安要素も減っていくっていうのはわかっていたので、撮影に臨むにあたっての不安を拭うためにもトレーニングはがんばりましたね。
──初めてのワイヤーアクションの感想は?
クランクインの前にみっちり練習させてもらったのが、すごく気持ちよかったんです。空をぐるぐる飛んでいる時間がホントに楽しかったです。
──でも大変さもあったのでは?
ワイヤーアクションは1人では全然できない。吊られている状態なので、自分1人ではまったくその位置から動けないし、アクションコーディネーターの皆さんが引っ張ってくれないと躍動感も出ないんです。しかも、手に持ってるトリガーの操作で立体機動装置からワイヤーが出て、アンカーが壁に突き刺さってワイヤーを巻き取る、それに体が付いていくっていう動作をしなきゃいけないんですが、スタッフの皆さんと呼吸をあわせないと連動しないんです。
──しかも芝居もしつつですよね。
そうなんです。動作の一瞬の間にこういう表情をしてほしいっていうような演出もあって……。ひとつの動きに大勢の人が関わっているので、なかなか成功しない、息があわないということがしょっちゅうありました。でも、そういった大変な時間を皆さんと共有できたのは、いい経験だったかなとも思います。
僕たちは見えない場所で見えないものと毎日戦っていた
──クランクインは先日世界遺産に登録された軍艦島(長崎県・端島)だったそうですね。
僕たちは観光客の方が入れない立入禁止区域で撮影させてもらったんです。だから普通に見ることができるところ以上に朽ち果てていて、不思議な雰囲気を感じました。ところどころに昔住んでいた方の生活の痕跡が残っていて、活気があった当時の人々の“気”みたいなものが現地に残っているような気がしました。
──セットにはないエネルギーがあったんですね。
そうなんです。それに危険もありました。足場は悪いし、上からいつコンクリートが落ちてくるかわからない状況だったので。本番以外のときは、全員ヘルメットを被って撮影に臨んでいました。“作品を撮るために僕たちは来たんだ”“地に足つけてやっていくんだ”という気持ちをしっかり持って挑まないと、足もとをすくわれそうな、そんな気がする場所でした。
──いい意味での刺激になったということでしょうか。
気持ちが引き締まりました。それと、セットに帰ってからCG撮影をするときに軍艦島の実景をイメージできたのですごく助かりました。撮影順を配慮していただいていたんだなとあとから気付きました。
──スタジオでの撮影はどうでしたか? CGのシーンが多いということはグリーンバックでの撮影がメインだったと思いますが。
僕たちはホントに見えない場所で見えないものと毎日戦ってました。ほぼグリーンバックの壁とじゅうたんのなかで撮影していたので。だから、完成した映画を観たとき、こんな映像になってるんだって驚きました。お客さんとは全然違う種類の感動が味わえました。
──あれがこうなってる的な?
“あれ”っていうものがそもそもないんです(笑)。
──なるほど(笑)。
ちょっとでも“ある”ものの話をすると、アルミンを助けるために巨人に食べられるシーンでは、歯の部分のない巨大な入れ歯の中でアルミンと一緒にヨダレまみれというかローションまみれになって「アルミン!」「エレン!」とやっていたんです。
──ものすごく想像力が必要そうですね。
僕たちが撮影しているときは、ただの青い縁だったものが、映像で観るときちんと巨人の歯になっているんです。そういうことに毎回感動していました。それがいかにすごいことなのか、お客さんにも知ってもらえたらうれしいなと思いますけど、観ていただけるだけでうれしいので、ぜひ観に来てください。夏休みの一大イベントであり、皆さんの心の中に残る作品になればいいなと思っています。
取材 / 伊東弘剛 文 / 岡大 撮影 / 笹森健一
出典:映画ナタリー
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