軌跡

―三浦春馬さん―

2014-01-21「僕のいた時間」インタビュー

2014年1月21日 テレビドガッチの配信
※配信元の記事は削除済です
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以下、配信記事より

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今週のインタビューゲストはドラマ『僕のいた時間』主演の三浦春馬さん

歩くこと、話すこと、触れ合うこと、笑うこと、それらが徐々にできなくなり、命のリミットがあると初めて意識した時、家族や友人、恋人とどう向き合うのか……。筋肉が徐々に衰えて呼吸困難に陥り、最終的には人工呼吸器をつけないと死に至ってしまう難病・ALS(筋萎縮性側索硬化症)に立ち向かい、今を生きる若者の姿をリアルに描いたドラマ『僕のいた時間』。本作でALSと闘う主人公・澤田拓人を三浦春馬さんが演じます。拓人は、医者の長男ながら中学の段階で親に見切られ、就職活動に苦戦する大学生で、ある日突然ALSに侵されてしまいます。ごく普通に日々を無為に過ごしていた拓人が、余命わずかな自身の運命を知り、それまで意識することのなかった家族や友人、そして恋人との向き合い方を考え、残された人生を模索しながらも前向きに生きるというヒューマンストーリーです。この作品の発案は三浦さんご自身で、脚本を「僕の生きる道」など “僕シリーズ”で知られる橋部敦子氏が手掛けています。自ら「命」「生きる」という重いテーマを課し、それに挑んでいる三浦さんに、本作にかける意気込みを語っていただきました。

初めて自ら発案した「命」をテーマにした作品に挑戦

「ラスト・シンデレラ」に出演中に、「命」をテーマにした作品にチャレンジしたいと、プロデューサーに語ったことから今作が実現し、難病に立ち向かう主人公を演じることになった三浦さん。自らドラマの発案をしたのは初めてという三浦さんに、作品が具体化するまでの経緯などを伺いました。

――今作の出演に際し、三浦さんご自身が「命」をテーマにした作品にチャレンジしたいという思いが強かったとのことですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

「ラスト・シンデレラ」に出演している時に、次にどういう役にチャレンジしたらいいか考えていて。その時に命を題材にして、そこで生まれる家族との絆や友人との関わりなど、日頃は深く考えないことを改めて考え直すような、今まで演じたことのない心情や表現力などに挑戦したいと思ったんです。それをマネージャーやプロデューサーに話したところから始まり、実現に至りました。

――自ら発案した内容が連続ドラマになるわけですが、今の心境はいかがですか?

相談していた当時は漠然としたイメージでしたが、こうして形になり、船出をするためにたくさんの人が集まってくれました。キャストもすばらしい俳優陣ですし、スタッフも経験も力もある人たちばかり。もちろん引き返すつもりもないですが、引き返せないところまで来ました。本当にやりたいと思っていた大きなテーマなので、責任感もどんどん増えています。主人公は命のリミットが迫ってくる中で、どういう感情に陥り、どういう希望に導かれるのか……。自分なりに考え抜いて、それでも答えが出なかった場合は、周りにいる心強い人たちに支えられながら、表情や心情を丁寧に演じていきたいです。

――自分から、こういう役や物語をやりたいという発信は初めて? 何か心境の変化があったのでしょうか?

初めてですね。今までにも命を題材にしたものはありましたが、テロを扱っていたり、高校生になったり、とても振り幅が大きく、色の強いものが多かった。でも、この作品はそうではなく、身近な人、当たり前の世界でもがいている小さな若者が主人公です。突然、大きな闇に包まれて、自分が過ごしていた世界がどんどん変化するけれど、ただ暗いだけじゃなく、その中でどうやって希望を見いだしていくのか。そして今まで意識していなかった周りの支えに感謝できるような、そんな思いが伝えられる芝居をしたいと思います。

役者、人としての成長を目指して

「ラスト・シンデレラ」をはじめ、現代の世相をドラマに取り入れることに定評のある中野利幸氏がプロデューサーを務める本作。自ら中野プロデューサーに提案し、実現した『僕のいた時間』で役者として人として成長したいと言う三浦さんに、作品にかける意気込みを話していただきました。

――プロデューサーは次の作品で何をやりたいかという会話の中で、「命」をテーマに選んだ姿を見て、役者としての成長に期待を寄せていました。とても早いタイミングで実現できましたが、ご自身の心境はいかがですか?

こんなにも早くできるとは思っていなかったので、感謝しています。それと同時に、自分が口にしたことが形になるという、これほど大がかりな経験はなかったので、すごく緊張もしています。力を貸してくれた人々に残念に思われないよう、全身全霊で挑みたいと思います。

――「ラスト・シンデレラ」など、これまでの“クールでかっこいい役者”というイメージを払拭したいのでしょうか?

そういうわけではありませんが、続けて同じような役をやるよりも、僕が役者としても人としても成長するためにも、今まで意識してこなかった命の深さや尊さを、作品を通じて考えたいという思いがありました。

――この作品を通じて、どのような姿を見てもらいたいと考えていますか?

僕のことを、役者として認めているとおっしゃってくださる方もいらっしゃいますが、「この人は表現力のある役者だな」と、皆さんに口を揃えて言っていただけるように努力していきたいですね。おこがましいかもしれませんが、そのきっかけになる作品にしたいと思います。

ALSという難病を題材にした理由とは?

主人公の拓人はALSという、筋肉が硬直し、だんだんと身動きが取れなくってしまう難病を患う若者。日本国内では1974年に特定疾患に認定され、10万人 に1~2人が発症すると言われるこの難病をテーマにしたのも三浦さん自身。その理由を三浦さんが明かしてくれました。

――ALSという病を、なぜ今作のテーマに選んだのでしょうか?

あるドキュメンタリーを観て、素直に関心を持ったのが、ALSという病気でした。映し出されていた家族の揺れ動きに感銘を覚え、この病気という題材を借りて自分からどんな感情や表現が出てくるのか興味が湧いてきました。映画では病に侵され、生きてきた軌跡や未来を考えるような役どころを演じたことはありますが、ドラマでは無かったので、新しい挑戦をしたいと思って、このテーマをスタッフに投げかけました。

――ドキュメンタリー番組のどの部分に感銘を受けたのでしょうか?

そのドキュメンタリーでは、お母さんがALSを患っていましたが、旦那さんは仕事があるにも関わらず、夜も床ずれが起きないように動かしてあげたり、子供の世話をしたり。そんな中でもお母さんにサプライズをしたいと、シフォンケーキを手作りしたりして、その姿に夫婦の愛を感じました。お母さんはまだ体を動かせる方だったので、国や投資家から(薬の)開発資金を援助してもらうという活動をしていました。家族全体が暗くなりすぎず、前に向かっていこうという姿勢がとても感動的で、言葉にならなかったですね。

――その家族のように病気に前向きな姿をドラマで表現しようと考えたのですか?

そこを描くかどうかは物語が進んでからになるので、まだ決まっていませんが、今は病気と関わった人たちが、愛や友情をどう考え、どう触れていくのかという部分を、しっかり考えて、表現していきたいと思っています。

今作の脚本のイメージ、多部未華子さんとの共演について

本作の脚本を手がけるのは「僕の生きる道」や「フリーター、家を買う。」などヒューマンドラマの名作を数々描いてきた橋部敦子氏。本作は、主人公たちの就職活動からスタートし、若者の苦悩や恋愛模様も描かれます。この脚本を読んだイメージや役作り、そして、拓人の大学の同級生・本郷恵を演じる多部未華子さんとの共演について伺いました。

――多部未華子さんとは映画「君に届け」以来の共演ですが、どんな印象をお持ちですか?

魅力的で、しっかりとした芝居をされるのはもちろん、僕自身の良いところを引き出してくれる女優さんです。一緒に芝居をすると、素直に感動するし、それに応えることにやりがいを感じます。お互いにしか出てこない感情やアイデアが生まれる、そういうことが期待できるので演じていて楽しいです。

――橋部敦子さんの脚本を読まれた感想は?

素晴らしかったです。主人公はなぜこの言葉を言ったのかなど、台詞の掛け合いを想像する作業が本当に面白くて。拓人という主人公を演じるのはプレッシャーもありますが、楽しみの方が大きいですね。

――第一話では、就活生の苦悩などが描かれていますが、そのような状況をどのように演じましたか?

僕は高校を卒業して仕事一本できましたので、就職活動というものを経験していませんが、脚本には就職に苦しんでいる主人公の気持ちが細かに描かれています。なので、そこを肉付けしていけばいいかなと。

――澤田拓人というキャラクターはどのように受け止めていますか?

言葉に語弊があるかもしれませんが、彼は少し裕福な家庭に生まれたものの、親の愛情が自分に向いていないんじゃないかという寂しさを感じていて、トラウマになっている。そのため、友人や先輩、恋人とも真っ直ぐに向き合うことができず、自分は好きでも相手が愛してくれているのか考えると、少し怖くて、深いところまで入っていけない青年なんだと思います。

――就活中にALSを発症する拓人。この難病患者を演じるための役作りは?

作品が始まってから、ALSの患者さんにお会いして、どういう心境なのか、どういう状態なのかを見させていただけるように計画しています。なぜ、スタート後かと言うと、この作品は就活の真っ只中から始まるので、先にALSの方を目の当たりにしてしまうと、どうしても気持ちが病気に引っ張られてしまいそうで。まずは仕事に就く難しさや友人関係や恋愛関係など、拓人の日常を演じてからにしようと思いました。ただ、知識としては持っていたいので、患者さんのブログや資料には目を通しています。

『僕のいた時間』というドラマで伝えたいこと

今を生きる若者が、難病に侵され、命のリミットがあると初めて意識した時、家族や友人、恋人とどう向きあうのか……。そんな難役に自らチャレンジし、役者として一歩前に踏み出そうとしている三浦さんに、本作での挑戦について伺うとともに、ドラマを観た視聴者に伝えたい思いを語っていただきました。

――今回の役では、これまでとは違った演技が求められていると思いますが、いかがですか?

ハードルはかなり高いですね。ALSという病気の進行過程を演者として表現する時に、リアルさをどこまで追及できるのか……。これは、自分にハードルを課すことにもつながるので、あきらめずに役と向き合い、いい芝居をしたいと思います。

――ハードルを課すという言葉がありましたが、高い壁を設定した理由とは?

芸能や演技の世界には辛い状況や気持ちを重ねた先に、絶対に何かあると思うんです。ある人が、伝統芸能の能の世界では、仮面をかぶることによって視野を狭くしているとおしゃっていました。とても危ないですが、その状況を自分に課すことで、より表現力を磨くという技術があるそうです。それを真似たわけではないですが、追い込むことでいい表情が生まれるなら、それに乗ってみたいなと。

――ALSに立ち向かう若者を描いたドラマですが、どのような展開になるのでしょうか?

ALS患者は、手足の筋肉だけでなく、表情もまぶたも動かなり、一点しか見られなくなってしまう閉じ込め症候群(locked-in syndrome)という症状が出ます。そうなるとコミュニケーションを取るのが極めて困難になり、このままの状態を保つのが良いのか、それとも尊厳死というものを選ぶのか、家族には葛藤が生まれます。経済的にも精神的にも辛い選択になりますが、尊厳死を選ぶ家族もいれば、病に冒された当人がまだやりたいことがあって、人工呼吸器をつけながらも最後まで一生懸命生きることを選ぶ家族もいます。ただ、呼吸器具をつけていることを延命と言い、不快に思う人もいる。この病にとって、呼吸器具をつけることは、延命ではなく呼吸法で、生きることと同じですが、本当に色んな思いが交錯しています。今回のドラマでどこまで表現するかはまだ決まっていません。もしかしたら自分のやりたいことを最後までやり遂げ、そこに向かって命を燃やし続けるということを描くかもしれないですね。

――『僕のいた時間』を観る人たちへメッセージをお願いします。

感じることを止めず、必死で考えて、役者としてだけでなく人間的な感性も育ったらいいな、育つはずだと僕自身思っています。この作品を観た人たちもそういう感性を温め直してもらえたら嬉しいです。同世代の人たちであれば、僕と一緒に成長して欲しい。そのためにも、最高の芝居をしなくてはと思います。精一杯演じますので、ぜひご覧ください。

出典:テレビドガッチ

 

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